太極拳のイメージ

こんにちは。

東洋一美しい太極拳をやっている、東京・田園調布の太極拳教室｜WIMAです。

「太極拳」という言葉をはじめて聞いた、というひとはあまりいないと思うのですが、じゃあ太極拳ってなに？と聞かれたら、うまく答えられるひとは結構少ないのではないでしょうか。

よくある答えとしては、

「うちのおじいちゃん、おばあちゃんがやってる、ゆっくりした動きのやつ」

「あれでしょ？中国の公園で朝早くにみんながやってるやつ」

「テレビで観たことある、なんか気が出るやつ？」

だいたいこんな感じですよね（笑）

どこかで見たことあるしイメージも浮かぶけど、実際は何なのかよくわからない・・・というのが一般的な知識のように思います。

せっかくなので、今日は「太極拳とは何か？」について、簡単にまとめてみたいと思います。

太極拳は武術

まず何よりも太極拳は武術です。

中国由来の戦う術（すべ）なんですね。

ただ起源は諸説ありすぎてよくわからないことも多いのですが、一説には、中国の伝説の武術家であり仙人でもある張三豊（ちょうさんぽう）が禅寺の嵩山少林寺で行を修めたのちに道教の武当山に移って修行をつづけていた折に、太極拳の極意を得たとされています。

鳥と蛇が戦う様を見て「柔よく剛を制す」の真意を見てとったからとされています。

さらに道教哲学、陰陽五行思想、中医学（東洋医学）などを組み合わせて、最強の武術として完成させたそうです。

もうひとつ、陳家溝村の陳一族発祥の武術が後世になり北京にわたって、当時出ていた太極拳理論に後押しされて広まったという説も有名です。

これ以外にも様々な説や流れがありますが、いずれにしても、東洋の思想や中医学を中心に据えた武術として、長い歴史の中で少しずつ理論化され、肉付けされて完成した体系的なものである、という話はすべてに共通していますね。

太極拳は科学

そう、太極拳は科学でもあるんです。

それも人体の中に流れている気を扱う科学です。気とは生体エネルギーと思ってもらってOKです。

長い歴史の中で武術家、中医学者、哲学者、宗教家など多くの専門家の手によって研究され改良を重ねてきた太極拳は気の流れについての研究の成果でもあって、人類の叡智がつまった宝ものと呼べるかもしれません。

古代の陰陽思想や太極八卦の考え方、道教の導引法、吐納法などをベースに作られてきた動きは、どれも論理的な根拠に基づいており、決して、ただのゆっくりした動きではないことがわかります。

現代に入り、太極拳の効果とエビデンスについての論文は世界中の科学・医療研究機関から出ていますし、最近のニュースでも八段錦（もっとも有名な気功のひとつ）の“弓を射る”動きが肺の経絡を活性化させ、免疫力を上げる効果がみられるということで、Covid-19の患者や治療に当たる医療関係者達が率先して実践しているという話が有名でしたね。

ちなみに、太極拳と気功は基本的に同じものと考えて結構です。動きによって呼び名が違うだけで、どちらも気の流れを調えたり体内の気の量を増やしていくことを目的のひとつにしています。

太極拳は芸術

最後に、もうひとつ、何よりも大切なことを加えておきましょう。

太極拳は芸術でもあるのです。

どういう意味かというと、本当に上手な方の動きを見ているとたいへん優雅で美しく、例えば武当派のようなものは叙情的でさえあります。体の動きと気の流れが調和し、見ている方も自然と調っていくような光景がそこに出現します。

老若男女という概念が消え、ただ美しい動きをともなう森羅万象の一部がそこにいる。

「ほんとうに良い太極拳は、やっているひとが気持ちいいことと、見ているひとも癒やされること。その相乗効果があってこそほんとうの太極拳です。」

かつて教わった師匠も、このようなことをおっしゃっていました。これはもう芸術的な域ですね。

まとめ

いかがでしょうか。

武術として実践的な側面を持ちつつ、中医学的にも気の流れをとおして心身の状態を改善あるいは向上させる、さらには芸術性を兼ねそなえた、人類の叡智がつまった総合科学芸術。

少し大仰な表現かもしれませんが、太極拳のほんとうの姿とはこのような表現がふさわしいかもしれません。

みなさんがお持ちの、あの「ゆるゆる」イメージは、あくまでも氷山のごくごく一角でしかなかったんですね。

いかにも奥が深い世界です。